クラフトジンとはそもそもどんなお酒?製造工程を詳しくご紹介!
投稿日: 投稿者:山口真弘

スタイリッシュなバー、SNSで評判のレストラン、高級感のあるホテルのカフェ……こういったおしゃれなスポットを中心に、最近密かな注目を集めているお酒が「クラフトジン」です。
「ジン」といえば、ヨーロッパを中心に古くから飲まれてきた蒸留酒です。しかしクラフトジンは従来のジンとは定義も製法も、そして味わいも異なります。
今回は、そもそもクラフトジンとはどのようなお酒なのかを詳しく紹介していきます。
クラフトジンの基礎知識!人気を集めるクラフトジンはどんなお酒?
クラフトジンとは蒸留酒のジンの一種ですが、通常のジンとは分けて考えられるのが一般的です。
クラフトジンとはどのようなカテゴリーのお酒で、どんな種類があるのでしょうか?まずはクラフトジンの基礎知識について深く探っていきましょう。
クラフトジンは「自由なお酒」!
ジンはウォッカやラム、テキーラとともに世界4大スピリッツに数えられる人気のお酒です。多くのジンは大麦やライ麦、トウモロコシといった穀物を使った蒸留酒をベースに、香草や薬草(ボタニカル)で香りづけをして仕上げます。
そんなジンの中でも注目を集めているのが、クラフトジンと呼ばれるお酒です。
実は「クラフトジンとはこういったものだ」という明確な定義はありません。多くの場合、小さな醸造所や蒸留所において、こだわりの製法で生み出されたジンのことをクラフトジンと呼びます。
とはいえ、どんなお酒であってもジンと勝手に呼んでいいわけではありません。ジンを名乗るお酒には大きく2つの決まりごとがあります。
条件1:瓶詰めをしたときのアルコール度数が37.5%以上あること
条件2:ジュニパーベリーの香味が加えられていること
これは裏を返せば、原料の1つとしてジュニパーベリーを使った上でアルコール度数が37.5%を超えていれば、あとはどのようなスタイルのお酒に仕上げてもジンを名乗れるということです。実際に、クラフトジンを製造する際に珍しいボタニカルを取り入れて、オリジナリティあふれる製品に仕上げる蒸留所もたくさんあります。
ジンはいわば「自由なお酒」です。そんなジンをお好みの製法でアレンジしたいという生産者の思いが、クラフトジンの密かな流行につながっていったのです。
クラフトジンに使われる「ジュニパーベリー」とは?
クラフトジンを製造するときには複数のボタニカルを使って風味をつけていくのが一般的です。ジュニパーベリーと呼ばれるボタニカルを必ず使うこと以外、クラフトジンのボタニカルに関するルールはありません。
では、なぜクラフトジンにはジュニパーベリーを必ず使わなければならないのでしょうか?
実は、ジンの歴史はジュニパーベリーから始まっています。「ジンの製造にジュニパーベリーを必ず使わなければならない」というよりは「ジュニパーベリーで作ったお酒をジンと呼び始めた」というのが真実です。
ジュニパーベリーはヨーロッパでかつて、万能薬と信じられていました。このジュニパーベリーを薬酒として飲むために、ジンの前身にあたるジュニパー酒が開発されたのです。
ジュニパー酒はオランダ語で「ジュネヴァ」と呼ばれており、これがイギリスに渡って「ジン」と呼ばれるようになりました。
ジンを語る上でジュニパーベリーというボタニカルは欠かせません。ジンのアイデンティティを語る上でも、そしてほかのスピリッツとの明確な違いを語る上でも、ジュニパーベリーは重要な意味を持ちます。
ジュニパーベリーさえ使っていれば、それ以外に使うボタニカルに制限はありません。クラフトジンの製造ではアニスシードやコリアンダーシード、アンジェリカ、フェンネル、シナモン、オリスルート、などのボタニカルのほか、カモミールやジャスミンといったハーブ類、オレンジピールやシークヮーサーなどのフルーツ類を使って味わいを調整することもあります。
クラフトジンの銘柄は無数に存在している
では、クラフトジンの「クラフト」にはどういった意味があるのでしょうか?
幅広い世代から人気を集めるお酒の1つに「クラフトビール」があります。クラフトビールの「クラフト」という言葉には「工芸品」という意味です。つまり、地方の小さな醸造所などで、手間をかけてゆっくりと作られたビールを工芸品にたとえてクラフトビールと呼んでいるのです。
近年話題の「クラフトジン」もこれと同じ考え方で作られています。各地の小規模な蒸留所が独自の工夫をしながらこだわって作っているジンの総称がクラフトジンなのです。
クラフトジンの銘柄は世界中に無数存在します。世界各国や日本各地でクラフトビールが作られていることはよく知られていますが、クラフトビールと同じようにクラフトジンにも数え切れないほどの種類があるのです。
クラフトジンの製法を紹介!どんな工程で作られている?
クラフトジンがどのように作られているのかは多くの方が気になるところだと思います。大多数の蒸留所で採用しているのは、ベースとなる高アルコールのお酒に対してボタニカルを加え、蒸留するという手法です。
ここからは、クラフトジンの製法について順を追って紹介していきます。
まずは原料に熱を入れ、糖化させる
ジンやウォッカ、ラムといったスピリッツの原料には穀類のほかイモ類が使われることもあります。ジンの製造では基本的にはイモ類は使わず、大麦や小麦、ライ麦、トウモロコシ、サトウキビなどの穀物原料を使います。
小麦や大麦、ライ麦、トウモロコシなどを原料とする場合には、まず素材を蒸煮していきます。穀物はデンプンを主成分としていますが、これをお酒にするためにはデンプンを糖に分解する糖化の過程が必須となります。穀物に熱を加え、麦芽などの酵素剤をプラスすることで、原料の糖化が進んでいきます。
サトウキビを原料とするジンを作るときにはここまで紹介した工程は不要となります。サトウキビには最初から糖分が含まれているため、糖化させずにそのまま発酵させることが可能なのです。
原料をアルコール発酵させる
原料を十分に糖化させたら、発酵の工程に移っていきます。
糖化した原料に水と酵母を加えると発酵が起こります。これは、酵母を加えることで糖をアルコールへと変化させる働きが起こるためです。
発酵によってできたお酒はまだ「もろみ」の段階です。この時点でのアルコール度数は10%とそれほど高くありません。ジンのアルコール度数は37.5%以上と定められているため、アルコール発酵をした段階でのお酒をジンと呼ぶことはできないのです。
蒸留をしてアルコール度数を高めていく
発酵させたお酒のアルコール濃度を高めるためには蒸留の工程が必要です。蒸留とはお酒を最適な温度で熱して、そのアルコール度数を高めていく作業のことです。
ジンの蒸留では連続式蒸留機と呼ばれる機器を使うのが主流となっています。水とアルコールは沸点が違うため、連続式蒸留機で適切に温度を入れればアルコールと水が分離し、アルコール度数を上げられるのです。
蒸留の過程ではアルコール度数を90%以上にまで高めていきます。この段階のスピリッツは無色透明で、香りも味もほとんどありません。
多くのクラフトジンメーカーはここまでの工程を終えたベーススピリッツを専業のメーカーから購入し、自社ではボタニカルを加え仕上げる工程のみを行っています。しかし中には、1からベーススピリッツを作りクラフトジンへと仕上げていくこだわりの蒸留所もあります。
スピリッツのアルコール度数を調整する
続いて、ジンにボタニカルが浸漬しやすくなるよう、ベーススピリッツの度数を調整します。蒸留によってアルコール度数が90%を超えているベーススピリッツに水を加え、度数を60%前後へと下げていきます。
クラフトジンのメーカーによっては、あえて50度や40度といった低い度数に調整し、新たな発想で製品作りをすることもあります。
ボタニカルでスピリッツに香りづけをする
無味無臭のベーススピリッツに味わいや香りをつけていく工程は、クラフトジンを作る上で最も重要です。
ジンを作るときには必ずジュニパーベリーを加えなければなりません。ジュニパーベリーはセイヨウネズと呼ばれる針葉樹のみで、寒冷な地域に多く自生しています。
このジュニパーベリーのほかに、各メーカーオリジナルのボタニカルをチョイスしてスピリッツに香りをつけます。
多くの蒸留所では浸漬法(スティーピング)と呼ばれる手法でジンの風味づけをしていきます。浸漬法とはスピリッツにボタニカルを直接漬け込んで香りを移し、再蒸留して仕上げる手法です。
ボタニカルを漬け込む時間は蒸留所によって異なります。数時間で仕上げることもあれば、24時間以上にわたって浸潤させることもあります。再蒸留の熱でボタニカルの香りは強く抽出され、スピリッツにどんどん溶け込みます。
また、バスケット法(ヴェイパーインフュージョン)という方式で風味づけをする蒸留所もあります。バスケット法ではまず専用のバスケットにボタニカルを入れます。続いてアルコールを含む蒸気をバスケットに通して香りをつけていきます。
浸漬法は直接ボタニカルを漬け込むため、強く濃厚な香りのクラフトジンに仕上がります。一方、バスケット法で香りづけしたクラフトジンは軽やかな風味になります。
とはいえ、ボタニカルを直接スピリッツに漬けないバスケット法でも、その香りは十分にお酒に溶け込みます。
クラフトジンの蒸留所では浸潤法が多く使われますが、両方の製法を併用して仕上げる蒸留所もあります。香りづけの方法によってクラフトジンの味わいに変化が生まれるため、どの蒸留所もこの工程にこだわっています。
再びアルコール度数を調整して味わいを整える
クラフトジンの香りづけの際に再蒸留を行うため、スピリッツのアルコール度数は再び80%前後にまで跳ね上がります。クラフトジンの仕上げの段階では、このアルコール度数を適切なレベルへと調整します。
ジンとして認められるためのアルコール度数規定は37.5%以上です。多くの蒸留所では40%前後、あるいは50%弱といった度数でクラフトジンを仕上げます。
仕上げ段階でアルコール度数の調整に使う水はクラフトジンの味わいに影響します。水の産地や品質にこだわって度数調整を行う蒸留所は多いものです。
クラフトジンを寝かせ、瓶詰めで仕上げる
できたてのクラフトジンはフレッシュな味わいです。仕上げをしたクラフトジンを一旦寝かし、香りをなじませ風味を落ち着かせます。
仕上げのこだわりは蒸留所によって異なりますが、多くのメーカーでは一週間から一ヶ月程度原酒を寝かせて味わいを整えています。
原酒の調整を終えたら最終工程の瓶詰めを行い、オリジナルのクラフトジンが完成します。
【まとめ】ボタニカルの香りが豊かなクラフトジンを味わってみよう!
クラフトジンとは、基本的なジンの製法にあれこれとアレンジを加え、オリジナリティあふれる味わいに仕上げたお酒です。ボタニカルを使って風味豊かに仕上げたクラフトジンは香り高く、味わいも極上です。
近年にわかに注目を集めているクラフトジンは、素敵なお酒を日々探している方にぜひおすすめしたいアイテムです。ご自宅で楽しむだけでなく、大切な方へのプレゼントとして選ぶのもよいでしょう。また、レストランやバーでお客様に出すお酒をお探しの方も、ぜひクラフトジンを選んでみてはいかがでしょうか。
クラフトジンはお酒を豊富に揃えているお店で購入できるほか、ウェブショップでも購入可能です。お好みのクラフトジンを探して購入し、その華やかな香りと味わいを体験してみてください。